ショートコラム「馬にまとわりつく虻」Vol.7

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『映画の秋』

 ドキュメンタリー映画を2本、立て続けに見た。もちろん劇場で。

 『原爆スパイ』(監督スティーブ・ジェームズ)と『壁の外側と内側』(監督川上泰徳)

 前者は第二次大戦中の米国の核開発計画=マンハッタン計画に携わった18歳の若き天才物理学者テッド・ホールが実はソ連に核関連情報を流していた!という衝撃の事実を本人とその妻、そして本人の親友の家族らの証言をもとに構成している。この映画、題名が『ATOMIC BOMB SPY』だが、厳密に言えばスパイとは言えない。なぜなら彼はソ連のエージェントではないからだ。あくまでも自己の信念にもとづいて自発的にソ連に情報を流したのだ。大戦後を見据えて、米国が、人類が今まで見たことのない大領殺戮兵器を独占すればソ連を攻撃するだろう、数多の人が殺される、なんとかせねば、そして行動する。

 インタビュアーが年老いたホールに聞いた。

『あなたは自らの行為を今、どうお考えですか』それに対して彼は『私自身の歴史だとしか言いようがない』と答える。間髪入れず『動機は?』との問いに、

しばらくの沈黙、そしてこう言った、『思いやりだ』。

 後者は中東ジャーナリストの川上泰徳が、イスラエルによるパレスチナ人ジェノサイドのさなか、2024年7月、パレスチナ・ヨルダン川西岸地区とイスラエル国内を交互に取材しまとめたもの。

 題名の『壁の外側と内側』からなんとなく分離壁で囲われたパレスチナ側が内側、それを囲むイスラエルが外側なのかなあ、とイメージしていたが、逆だった。イスラエルが壁で守られた内側、殺され、破壊されつくすパレスチナが外側。『内側』の人々は自分の国が『外側』に対して『何』をしているのか、しらないし知ろうとしない、『内側』(自分)に対する外側からの攻撃だけを問題にする。『パレスチナの奴らはイスラエル人がみんな死ねばいいと思っている』

(インタビューを受けたイスラエル人の発言)と思っている。しかしそんなイスラエルの中でも抵抗がある。18歳の青年たちが兵役を拒否して投獄されているのだ。その一人が言った。『私は自分の良心に従って行動している、だから怖くはない』。

第8回もお楽しみに!

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