Hello World(ハローワールド)-プログラミング教育で同胞社会の未来が変わる!?-「第1回 プログラミング教育とは何か?」

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新連載「Hello World(ハローワールド)-プログラミング教育が同胞社会を変える!?-」

システムエンジニアとして働く傍、IT業務支援や教育事業を手がける「Colibbon」の代表として活動する趙成哲さんが、昨今ブームとなっているプログラミング教育についてわかりやすく解説してくれます。

プログラミングが私たちの生活、そして子供たちの将来や同胞社会の未来にどのように影響を与えるのか。
そして私たちにどんな可能性をもたらしてくれるのでしょうか。

全12回、約半年に渡って配信予定。第1回は「プログラミング教育とは何か」について語ってもらいます。

トンポヨロブン、アンニョンハセヨ。

Colibbon代表の趙成哲です。Colibbonは主に、IT関連の業務支援やSTEM(科学・技術・工学・数学)教育プログラムの提案、プログラミング教室を行っています。

本連載コラムでは「子どものプログラミング教育」についてお話ししようと思います

2021年現在、日本全国あらゆる場所(オンラインも含めて)でプログラミング教室が盛んに行われています。「プログラミング」と聞けば、大学生や大人が学ぶというイメージがあるかもしれませんが、実のところ大人用のプログラミング教室だけでなく、小学生や中学生向けのプログラミング教室がどんどん開校されていっています。今、日本では子どものプログラミングがブームとなっているのです。

なぜ子どものプログラミング教育がブームになっているのか?子どもに習わせて意味があるものなのか?プログラミング教育の背景や方法、実効性についてのんびり説明していこうと思います。できるだけわかりやすく整理しましたのでご一読ください。

第1回:プログラミング教育とは何か?

子どものプログラミングとは?

私たちの身の周りにはたくさんのモノがあります。その中でも炊飯器のような家電製品や自動車、信号機などの機械には人が操作する範囲と機械が自動的に働いてくれる範囲があります。

例えば一般的な洗濯機を考えてみましょう。洗濯機は洗濯するための家電製品ですが、洗濯するものを洗濯機に入れる作業は人が行います。そして洗濯機のスタートボタンを押すと洗濯機が注水、すすぎ、脱水などの洗濯工程を自動的に行ってくれます。

これは、機械の中にあるコンピュータが制御しているのですが、コンピュータが意思をもって制御しているわけではなく製造者があらかじめコンピュータに命令を組み込んでいるのです。この命令のひとまとまりを「プログラム」と呼んでいます。

そしてプログラムを作る工程を「プログラミング」と呼びます。コンピュータは人間の言葉を理解することができないため、プログラミングは命令を通常の文章で書くのではなく、プログラミング言語というもので書きます。プログラミング言語でプログラミングすることによってそれが機械語に変換され、コンピュータがその命令を受け入れるようになります。

プログラミング言語でも特に有名な「Java」という言語でプログラムを組むと以下のようになります。

-----------------------------------------------------------------
public class Sample {
    public static void main(String[]  args) {
        System.our.println("Hello World");
    }
}
-----------------------------------------------------------------

これは、「Hello World」という文字を出力するプログラムです。(”Hello World”は、慣習的に一番初めに作るプログラムとされています。)

初めてプログラミング言語を見る人からすれば難しそうに感じるかもしれないですね。

さて、本題は子どものプログラミング教育なのですが、子どもたちに上のようなプログラミング言語は難しすぎると感じるかもしれません。実際に「Java」を勉強している小学生や中学生はほんの一握り程度でしょう。

では子どもたちはどんなプログラミング言語を扱って学習しているのでしょうか。

実は、子どものプログラミング教育として扱われているプログラミング言語のほとんどはビジュアルプログラミング言語というもので、プログラミングをテキスト形式で記述するのではなく、あらかじめ準備されている視覚的オブジェクトでプログラミングしています。

百聞は一見に如かず、まずは下の画像を見てください。

これは、Scratchというビジュアルプログラミング言語です。

ブロックのような、パズルのピースのようなものを指やマウスを使って動かし組み立てていきます。画像のプログラムは、旗ボタンを押したら猫のキャラクターが30歩あるいて「ニャー」となくというプログラムです。どうでしょうか?これなら子どもたちも難なくプログラミングができそうですね。

人の思考の発達は、動作的思考から直観的思考へ、直観的思考から抽象的思考に発展していくとされていますが、ビジュアルプログラミング言語は抽象的思考が必要なプログラミングを直観的思考にある程度落とし込むことができているため、子どもたちに向いているのだろうと私は考えています。

最近は仕事で扱うプログラミング言語と違って、趣味や遊びの領域で扱うプログラミング言語がたくさん登場しています。これを利用すれば子どもたちもプログラミングを学ぶことができるし、よりコンピュータに触れる機会も増えることになります。

子どもプログラミング教育の背景

なぜ子どものプログラミング教室がブームになっているのかについて説明します。

ブームになった直接的な理由は、2016年に発表した「2020年度からの初等教育のプログラミング教育の必修化」です。日本の文部科学省は、2013年からプログラミング教育をはじめとした情報教育に力を入れるべきとしてICT教育を掲げていて2020年にすべての小学校でプログラミング教育を導入することを2016年には発表していました。それをビジネスチャンスとしてあらゆる企業たちがプログラミング教室を推進していったことが今のブームにつながっています。

さて、文部科学省はなぜ2020学年度から小学校にプログラミング教育を導入することを決定したのでしょうか?ビジュアルプログラミング言語が普及し始めたたことも理由の1つとして考えられますが、一番の理由としては第2次安倍内閣によって打ち出された「日本再興戦略」です。

現代社会では、情報教育なしで日本の経済成長を見込めないことが考えられたに違いありません。「日本再興戦略」についての是非はここでは問いませんが、情報教育が経済に影響を与えることは間違いないことです。それを証明させたのが平成元年から約30年の間に起った世界の経済変動です。

平成元年には、株式時価総額において日本が圧倒的に世界のトップを占めていたことがわかります。しかし令和元年にはどうでしょう?GAFAをはじめ、米国や中国の企業がトップを占め、日本企業はせいぜいトヨタ自動車が44位にランキングしている程度です。(GAFA~2010年代にIT業界を席巻した米国企業の4社を表す造語。それぞれの英字はグーグル、アップル、フェイスブック、アマゾンのことを指します。)

日本は従来のビジネスだけを考え、新しく登場したインターネット技術をおろそかにした結果、米国、中国に大逆転されてしまったのです。もちろんこの事実は令和になってからわかったことではありません。しかし21世紀に入って急成長しはじめた米国企業に対して、今の日本企業ではもはや追いつくことが難しい状況になりました。インターネットが創出する価値・サービスについて日本は気づけずにいたのです。

日本は2010年代に入って教育を改めだしました。インターネットや情報通信技術に関する知識や活用能力を習得するための教育が順次盛り込まれました。また、(情報検索のコストがインターネット技術により減少したため)知識の保有よりも知識の活用が重視されるようになった現代社会にあわせて学習結果よりも学習プロセスをより重視したアクティブラーニングが新たな授業スタイルとなりました。

そして2020年度からプログラミング教育の必修化が始まり、今年(2021年4月)からGIGAスクール元年を宣言して情報端末を日常的に利用するためのハード・ソフト両面について整備を始めました。(GIGAスクールとは、児童生徒向けの1人1台端末と、高速大容量の通信ネットワークを一体的に整備し、多様な子どもたちを誰一人取り残すことのなく、公正に個別最適化された創造性を育む教育を、全国の学校現場で持続的に実現させる構想のことで、Global and Innovation Gateway for Allの略です。)

イギリスでは1999年からICT教育が始まったという記録があります。(ここでいうICT教育は、情報通信技術に触れて学ぶ情報リテラシー教育を指します。)他の国ははっきりした年代は把握しきれていないですが、日本のICT教育は出発は相当時期が遅いということを知らなくてはいけません。

ウリハッキョでも2018年度からICT教育が導入されています。大阪のウリハッキョでは初級部4学年生以上の児童は1人に1台端末を持っていてハード・環境面に関しては日本学校よりも早く準備しています。ソンセンニム(先生)たちは、より良い豊かな授業を実現するためにICT教育について日々研究をされていますのでソフト面についても今後素晴らしいものが準備されていくのだろうと期待しています。ウリハッキョも21世紀社会に見合った教育にどんどん変わっていくでしょう。

第1回のまとめ
  • 子供たちが扱うプログラミングはビジュアルプログラミング言語を使うことが多く、趣味や遊びの領域として楽しく学ぶことができます。
  • プログラミング教育の背景は、日本経済成長を取り戻す「日本再興戦略」にありました。
  • ウリハッキョや日本学校ではICT教育が導入され今後情報教育も充実されていくと考えられます。


第2回はもう少しビジョンを大きくしてプログラミング教育の必要性についてお話しようと思います。

(次回へ続く)

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