『読書の秋②』
『幸福を武器として闘う者のみが倒れてもなお幸福である。』
昭和初期、稀代の哲学者として名をはせた三木清の『幸福論』の中の、この一節を冒頭においた、柳広司の小説『アンブレイカブル』。
小林多喜二、鶴彬、三木清・・・
実在した彼ら(非実在の主人公も登場する)をあくまでもフィクションとして描くこの短編集は今、この日本という『絶望』を生きる人々に、それでも人間はすてたもんじゃない、という不思議な安堵を与えてくれる。
タイトルのアンブレイカブル(unbreakable)とは、『壊れない』、『解読できない』ということ。
まさにこの小説に登場する人々を象徴する言葉だ。
彼らの何が『壊れない』のか。それは彼らの『生き方』だ。
そしてその彼らの『生き方』を、体制側、支配側はどうしても『解読できない』のだ。『解読できない』ことは底知れぬ恐怖をもたらす。
その恐怖の裏返しは・・・
この小説を読み返しながら、誰かが語った言葉が脳裏をかすめた。
『もはや真実は小説でしか現わせない』

今年最後のショートコラムです。
来年もお楽しみに!


